○大神谷
昔、米良山に狩りの好きな殿様がおられました。
ある日、家来を連れて狩りに出かけられました。
山に入り、しばらく歩いていると見通しの良い尾根に到着しました。涼しい風に吹かれて景色を眺めていると、谷向こうの木の枝にそれはそれは立派な鷹が留っているのが目に入りました。
殿様は、お供で家中きっての弓の名人の右近に、鷹を射るように命じました。
鷹まではざっと40間(約70m)。右近は矢を番えじっと狙っていたが、やがて矢を離しました。
矢は過たず命中したようにかのように見えたのですが、鷹は木の枝に留ったままでした。納得できない殿様は、右近にもう一度射るように命じました。右近が再度射ると、やはり中ったように見えたにもかかわらず、鷹は微動だにせずじっと殿様たちを見ていました。殿様は、さらに射るように右近に命じ、右近も今度こそと再度矢を放ちました。
すると、今までびくともしなかった鷹が木の枝から落ちたのです。
みんな喜び、殿様を先頭に鷹が落ちたと思われるところに駆けつけましたが、そこでとんでないものを目にしたのです。
何とこの鷹は、矢の一本の中ほどをくちばしで、もう一本を足で受け止めていました。しかし三番目の矢はどうする事も出来ずに胸を射ぬかれてしまっていたのでした。
殿様と右近は、この事があってから鷹の霊に祟られたのか謎の病に罹ってしまいました。
殿様は、鷹に「大神(だいじん)」の称号を付け、鷹を射た近くの谷に祠を建て、毎年鷹祭を続けました。村人たちは、この話を鷹大神や大神鷹として語り継いだそうです。
今でも、その祠は残っていて、その谷を大神谷と呼んでいるそうです。
(西米良村語り部の会発行「と申すカッチン・12・大神谷」から抜粋。ちょっとだけ ? 加筆・編集)
管理人追記・「大神谷」「祠」がどこにあるのか分かりませんでした。
さて、民話では殿様たちに祟りがありましたが、この話を現代に持ってくるとどうなるでしょうか。
狩猟免許の有無や禁猟区、狩猟期間まで考えに入れると込み入ってしまい、手に負えそうもないので「弓矢で鷹を狩った」「弓矢で鷹を狩るように命じた」部分だけに焦点を当てました。
(以下、「法」とあるのは「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」のことです。)
1. 弓矢を持って山に入っている事
銃刀法では、弓矢の所持についての規制はありません。
しかし、山中を持ち歩いていたり、町中でむき出しで持っていたりすると職務質問や場合によっては、軽犯罪法に抵触する事になるかもしれません。
また、狩猟が目的で弓矢を所持していた場合は処罰の対象となります。その場合の罰則は6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。(法第16条、法第84条)
2. 弓矢で鷹を射た事
法では、猟具が定められていていますが、弓矢はそこに含まれていません。
また、タカは希少鳥獣に指定されていて、狩猟の対象ではありません。
今回のケースでは、違法な猟具で禁鳥を狩った訳ですから処罰の対象となります。
罰則は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金です。(法第12条、法第83条)
3. 弓矢で鷹を射るように命じた殿様は?
部下に命じて狩らせました。部下は、断れるもんじゃありませんよね。
共犯(教唆犯)になります。
処罰は、実行犯と同じ扱いで一年以下の懲役又は百万円以下の罰金です。(刑法61条)
4.祟り
現在でも、科学的に証明できないことが多々あります。
各法に触れて処罰を受ける他に、やっぱり祟りを受けるかも・・・・。(((; ゚д゚)))ブルブル
以上、民話をネタにしての「もしも」の話でした。
新旧いずれの話も、ロクでもない結果に落ち着きました。
自然を大切に。命を大切に。と、いったところでしょうか。
2017/11/29
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